ピクニックにて
三年も前のことになるが、そのときとても仲良くしてくれていた人がいた
その人とは月に一回美術館に行ったりクラシックコンサートに行ったりした。
音楽の趣味は大体一緒で、絵と本の好みは少し違って、嗜好品の好みは全く違う人だった。
相手は甘党のコーヒー党で、私はしょっぱいお菓子が好きで紅茶党だった。
私は何の知識もないなりに色々話をしていたけど、相手はすごく頭の良い人だったので1年くらいで飽きられてしまった。
その人はあまり表情は動かないけれど、とても優しい人だった。
その日は天気が良いので美術館に行く前に公園でのんびりしてから行こうということになった。
私はお菓子とレジャーシートを持っていくので飲み物をお願いした。
ピクニックなら塩気のあるお菓子がいいなと思ったが相手は甘いものが好きだったなとスパオスナッツとシューケットを持っていった。
頼んだとはいえ急だったのでペットボトルのお茶かなと思っていたが相手が持ってきたのは魔法瓶に入ったコーヒーと紅茶だった。
その瞬間この人はとてもいい人だなという思いが心を駆け巡った。
急に決まった予定だし、自分はコーヒーだけあれば快適に過ごせるというのに私に合わせて紅茶も持ってきてくれるなんてとんでもなく気遣いのできる温かみのある人だなと思った。
そもそも朝早めに集合する予定だったし、その人はもっと朝早くから起きてお湯を沸かしコーヒーを淹れ魔法瓶に注ぎ、もう一度お湯を沸かして紅茶を入れ魔法瓶に注ぐという作業をしてきたのかと考えるとなんと相手のために労力を割ける人なんだと思って心がめちゃくちゃあたたかくなった。
しかも500ml×2瓶だったので1kgの重量!めちゃくちゃ重くてめんどくさいものをお願いしてしまって申し訳ない気持ちになった。
そして私はお菓子を買ってくるだけでよかったので、飲み物を用意するコストに対してやすく見積もりすぎていたので反省した。
(今度ピクニックあるときは簡単に飲み物を持っていくのを人に任せないようにしよう。
その人の距離に応じて考えるのがいい)
その日は相手にとても感謝をして野原でゆっくりしてから美術館に行った。
ピクニックの途中、相手はウトウトしつつ空を眺めていた。それを私はとても愛おしく思った。
とてもいい日だった。その人と過ごした中で1番心に残っている1日だ。
そして、私の人生で1番相手を好きになった1日だった。