コマゴメピペット

好きを通そうと思っている

オーブンのはなし

高校一年のとき、私は大宮にある祖母の家に下宿していた。
綺麗好きでしっかり者だが料理が得意でない祖母といつも静かに本を読んでいる祖父の三人で暮らしていた。

家にはとても大きくて性能の良いガスオーブンがあってよくお菓子を作っていた。
祖母は料理が得意ではなかったのでリフォームしてせっかくオーブンをつけたのにほとんど使っていなかったようでピカピカだった。
私は小さい頃に読んだ絵本に出てきたような大きくて綺麗なオーブンに興奮して週に1回は必ずお菓子を作っていた。
(祖母の家の近くに製菓材料店があったのも理由の一つ)
チーズケーキを二台焼いて一台を家で食べて友達に丸ごと一台あげたり、ものすごい量のシュークリームを作って学校で配ったりした。

引っ越しのタイミングで電子レンジを買うことになったとき、迷わずオーブン性能の高いものを選んだのもあって今も快適にお菓子作りができているがあのときには敵わない。

あのパンが一度に12個焼けて七面鳥も丸焼きにできる最高の火力と空間を兼ね備えた作り付けのオーブンには敵わないのだ。私の情熱もそこにおいてきてしまったのかもしれない。